[神経科学の発展のために] 「ヒト脳機能の非侵襲的研究」*の倫理問題等に関する指針 改訂にあたっての声明

[神経科学の持続可能な発展のために]
ヒト脳機能の非侵襲的研究の倫理問題などに関する指針(2022年改訂版)
2022年5月10日(公開日)

 「ヒト脳機能の非侵襲計測法」は、ヒトの「こころ」の物質的基盤である「脳」の全容解明とその不調による精神・神経疾患の克服を目指す神経科学の一分野として欠かせない技術である。一方で、計測技術の多くは医療に用いられているテクノロジーの基礎・臨床神経科学研究への応用であり、かつ個人から得られる脳情報を研究対象としていることから研究倫理上の配慮を欠かすことができない。日本神経科学学会は、2001年に「ヒト脳機能の非侵襲的研究の倫理問題などに関する指針」を策定し、2019年には神経科学技術の進歩と「臨床研究法」や「個人情報の保護に関する法律」の施行など社会情勢の変化を反映させた大改訂を行い、ヒト脳機能の非侵襲的研究の倫理問題に積極的にコミットしてきた。
 今回、2019年の改訂からさほど時間が経過していないものの、2021年に「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」と「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」が、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」として統合されたことから、この統合指針を反映させた改訂を行なった。「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」では、「侵襲」あるいは「介入」といった言葉の定義が明確になされており、このような概念の明確化を本指針にも反映させた。一方で、本指針が扱う手法の一部が、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」の定義に基づけば「非侵襲」とは言えない状態も生まれており、本指針をさらに発展的に改訂することの必要性も認識している。次期改定までの間、本改訂指針が、ヒト脳機能の非侵襲的研究に携わる基礎・臨床神経科学研究者、研究参加者や関係者にとって有意義な情報として活用され、ヒト脳機能の非侵襲的研究の発展に貢献することを願う。

日本神経科学学会 会長 柚崎 通介
日本神経科学学会 倫理委員会委員長 花川 隆

改訂担当(倫理委員会委員)
花川 隆(委員長)、佐倉 統、定藤規弘、島田斉、田中悟志、松田哲也

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