[神経科学の発展のために] 「ヒト脳機能の非侵襲的研究」*の倫理問題等に関する指針 改訂にあたっての声明

2020年3月3日(公開日)

各種テクノロジーの発達により、従来ブラックボックスであった生きた人の脳の機能解剖を計測する神経科学的手法が複数開発され、広く研究に用いられている。このような手法の代表が磁気共鳴機能画像法 (fMRI)であるが、脳波 (EEG) や脳磁図 (MEG)などの臨床神経生理学的手法、ポジトロン断層法 (PET)やシングルフォトン断層法 (SPECT)などの核医学的手法、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)などの光イメージング法、経頭蓋的磁気刺激法(TMS)や経頭蓋的直流電気刺激法(tDCS)などの非侵襲脳刺激法(NIBS)を含む。これらの手法は研究対象者にほとんど肉体的負担を与えないことから「ヒト脳機能の非侵襲計測法」と総称されている。
 「ヒト脳機能の非侵襲計測法」の多くは医療にも用いられているテクノロジーの基礎・臨床神経科学研究への応用であり、かつ個人から得られる脳情報を研究対象としていることから研究倫理上の配慮が必要である。日本神経科学学会は、2001年に「ヒト脳機能の非侵襲的研究の倫理問題などに関する指針」を策定し、2010年には改訂を行うことで、ヒト脳機能の非侵襲的研究の倫理問題に積極的にコミットしてきた。
 2010年の前回指針改訂から10年が経過する間に、ニューロフィードバック(Neurofeedback)やBain Machine Interface(BMI)などの神経工学テクノロジーの進展に伴い、「ヒト脳機能の非侵襲的研究」が医学系研究と境界を接する事例も増えつつある。さらに、2014年には人を対象とする医学系研究の実施にあたり全ての関係者が遵守すべき「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」が定められた。2017年には、人を対象とする医学系研究の中でも、「医薬品等を人に対して用いることにより、当該医薬品等の有効性又は安全性を明らかにする研究」としての臨床研究の実施手続きや情報公表制度などを定めた「臨床研究法」が施行された。これらの指針や法では、医学系研究の多様な形態に鑑み、基本原則のみが示されていることから、それぞれの研究領域において理念を踏まえた具体的かつ適切な指針を定めることが望まれる。また、「個人情報の保護に関する法律」も2015年に大きく改正され、同改正が2017年から施行されている。
 脳科学研究は国の政策として推進されており、指針や法を遵守することはもとより、時代に調和した適切な倫理的配慮と社会に向けた情報発信が求められている。今回、こうした時代の変化を反映させるために本指針を改訂した。本改訂指針が、ヒト脳機能の非侵襲的研究に携わる基礎・臨床神経科学研究者、研究参加者や関係者にとって有意義な情報として活用され、ヒト脳機能の非侵襲的研究の発展に貢献することを願う。

日本神経科学学会 理事長 柚崎 通介
日本神経科学学会 倫理委員会委員長 花川 隆

改訂担当(2018-2019年度 倫理委員会委員)
定藤規弘(委員長)、佐倉 統、須原哲也、花川 隆、福永 雅喜、松田哲也

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