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コロナ禍におけるFENS Forum 2022

理化学研究所 脳神経科学研究センター
時空間認知神経生理学研究チーム
大内彩子
 2022年7月9日から13日までの5日間、私はフランス、パリにて開催されたFENS Forum 2022に参加してまいりました。フランスの夏は涼しく過ごしやすいと聞いておりましたが、滞在期間中の日中気温は35度前後で、照り付ける日差しに外出時にはサングラスと日焼け止めが手放せない毎日でした。
 私は今回の学会参加に際し、光栄なことにFENS Forum Travel Awardを受賞させて頂きました。各国から選考された受賞者は、FENS Forumで開催されるJump the FENS partyに参加することができます。本イベントは学会3日目に、学会会場からは徒歩で1時間ほど離れたアレクサンドル3世橋の下に位置するBridge clubというナイトクラブで開かれました。開始直後から多くの人が集まり賑やかな雰囲気でしたが、コロナ禍でフランスでも感染者が増えている状況でしたので、名残惜しくも私は早々にホテルに戻ることにしました。
 私のオンサイトでの学会参加は約3年ぶりで、発表が楽しみな気持ちと、緊張した気持ちを抱きながら発表当日を迎えました。私の研究対象としている海馬歯状回の苔状細胞やそれに近い分野を専門とする研究者は少なかったものの、純粋に研究内容に興味を持って来てくださった方々にプレゼンをして、面白い研究だね、と言っていただけたことが本当に何よりの励みになりました。思いがけない視点から研究に対する指摘やアドバイスもいただけたのでとても勉強になりました。また、発表を通して、今回の研究内容をさらにブラッシュアップさせようという意欲がかきたてられるきっかけとなりました。やはり対面での議論は研究の些細なポイントであったとしてもお互いに聞きやすく、オンラインでは聞き流されてしまうような内容でも深く議論することができるため有意義な時間を過ごすことができたと感じています。
 本大会の期間中に、ご縁がありパスツール研究所で働く日本人研究者の方々と交流する機会がありました。私が想像していたよりも多くの研究部門が集っている研究所で、研究者の方々はとりわけ自由で活発なコミュニケーションをされていたのが印象的でした。また、ヨーロッパの国を拠点として研究活動を行うことに関して、米国と比較すると孤立してしまうイメージを抱いていたのですが、フランス国内に留まらず、欧州各国で積極的につながりを作る活動をされていて、思っていたよりもオープンで研究しやすい環境なのかもしれないと考えが改まりました。フランスでの研究や居住環境について、現地に住んでいらっしゃる方々から実際にお話を聞けたのは非常に刺激になりましたし、自分の今後のキャリアを考える上でも参考になったと思います。
 コロナ禍の海外出張は不安も大きく、直前まで本当に行けるのか悩んでいましたが、現地で様々なバックグラウンドをもつ研究者の方々と議論できたことや、久しぶりに普段の実験部屋やデスクの前から異なる環境に身を置けたことは、非常に良い気分転換となりました。ただ、海外出国72時間前までにPCR検査を受け、陰性でなければ日本に入国できない、という緊迫した状況にあったことが唯一にして最大の気苦労でした。無事に予定通り帰国できたのでよかったですが、一日も早く憂慮なく安全に渡航できる情勢になることを願うばかりです。
 最後になりましたが、この度のFENS Forum参加支援の運営に際しご尽力下さったJNSおよびFENSの関係者の皆さま、そして日頃よりお世話になっている藤澤茂義先生をはじめ、卒業後もご指導いただいている池谷裕二先生、本研究内容のブラッシュアップにご協力くださっている豊泉太郎先生、また各所でお世話になった諸先生方へ、この場を借りて心より御礼申し上げます。

JUMP the FENS partyの様子

ポスター発表中の筆者

学会会場のエッフェル塔のパネル前にて(左が筆者)
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