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SfN Neuroscience 2024 参加記

筑波大学 ヒューマンバイオロジー学位プログラム
分子神経生物学 鶴田研究室
武富 巧
 私は、JNS-SfN Exchange Travel Awardにご支援いただき、世界最大級の神経科学学会である北米神経科学会の年次集会(SfN Neuroscience 2024)に参加いたしました。海外で行われる大規模な国際学会に参加するのは初めてであり、予想以上に有意義な経験でしたので、参加記としてご報告いたします。
 JNS-SfN Exchange Travel Award受賞者は、International Fellows Orientation SessionとInternational Fellows Poster Sessionに参加します。International Fellows Orientation Sessionでは、日本神経科学会(JNS)からだけではなく、Chinese Neuroscience Society (CNS)やInternational Brain Research Organization(IBRO)からの受賞者も参加します。この会では、参加する際の不安な点について確認することができるほか、自己紹介の時間が設けられ、幅広く交流を深める機会を提供していただきました。最も印象に残ったのが、自己紹介の工夫についてです。ある受賞者が、自分のニックネームをスーパーマリオブラザーズのキャラクターの名前で紹介しており、唯一多くの人に名前を覚えてもらっていました。このような一工夫は、機会を活かすために重要であると学びました。
 その後、学会の会場に移動すると、会場の広大さに圧倒されました。メインのホールには、無数の椅子と多くのスクリーンTV番組のようなステージが用意されており、世界最上級の大きさとクオリティを感じました。ポスター会場も、時間内に全て回るのは不可能と思えるほどのポスターが並んでおり、神経科学の分野の中でも、全く考えたことのないような実験法や対象などを扱っている研究が多くありました。
 初日の夕方には、受賞者のみが発表することのできるInternational Fellows Poster Sessionが開催されました。このポスターセッションは2時間の枠が用意されていますが、参加者の多くは受賞者であり、発表者に対して見て回る人が多くはないため、発表の機会は多くはありませんでした。しかし、周りの発表者も同様であったため、周りの人と発表しあってディスカッションするなどして、思いがけない交流をすることができました。私は英語での会話に不安があったものの、身振り手振りを加えながら丁寧にゆっくり話すと、相手も合わせてくれることが多いのできちんとコミュニケーションを取ることができました。また、日本にゆかりのある方も数人発表を聴きに来てくれました。将来の参加者の方々には、ぜひ早めから積極的に周りの参加者と交流し貴重な時間を無駄にしないでほしいと思います。
 学会の5日間を通して最も印象に残っているのは、ポスターセッションです。ポスターセッションでは、午前と午後で全てのポスターが入れ替わります。ポスターは4時間掲示することができ、1時間のコアタイムが指定されています。しかし実際は、コアタイム以外も含めほぼ全ての時間発表者がポスター前にいることが多く、たくさんの人とディスカッションすることができました。また、世界中から非常に多くの人が発表するため、私の研究の標的遺伝子Sparcl1に関して研究を行っているグループが国内よりも多くありました。さらに、ディスカッションした方の何人かが私のポスター発表に来てくださり、さらに議論することができました。その結果、標的タンパク質の新たな機能や病態との関連などを深く議論することができ、自分の研究を発展させていく上で新たな視点を得ることができました。また、この議論の中で、複数回この研究内容が論文化されているかを確認されました。これは、研究の信頼性を確かめるのみならず、他の研究者が私たちの研究を基にさらに発展させるかどうかを確認しているようでした。論文にして発表することが他の研究者の研究を進めるためにも役に立ち、科学の進歩に貢献することができるのだと、体験を通して理解することができました。ポスター発表をする中で最も印象に残っているのは、SPARCL1の構造を決定した論文の第一著者の研究者の方がポスター発表に来てくださり、議論することができたことです。この方は、私たちが書いた論文を複数読んでくださっており、内容も把握してくださっていたことから議論は深く発展し、今後のために連絡先を交換しました。この体験からも、論文にして発表することは無駄になっておらず、世界のどこかの研究者が役立てて研究をさらに発展させる可能性があることを感じることができ、非常に嬉しく思いました。
 SfN Neuroscience 2024では、公式のSocialization eventsが開かれていました。中でも、私が注目している分野の会には、ポスター発表でディスカッションした人が参加していただけでなく、非常に著名な先生と直接会うことができました。実際に話している様子は非常にフレンドリーでしたが、内容には芯があり、大御所である所以を実際に感じることができました。
 上記のように、私は今回の学会参加を通じて、研究の新しい可能性を見出すとともに、多くの国際的なつながりを築くことができました。このような貴重な経験を支えてくださったJNS-SfN Exchange Travel Award Programの関係者の皆様、そして日頃からご指導くださる鶴田先生をはじめとする研究室の皆様に、心より感謝申し上げます。

ポスター発表の様子
(受賞者は黄緑のリボンが付き、おめでとうと頻繁に声をかけられます。また、一般にポスター発表者や初めての参加者を示すバッチが配られており、着用しています。発表内容はモザイク処理)
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