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SfN Neuroscience 2022 参加記

大阪大学大学院医学系研究科
神経内科学 臨床研究グループ
木村一皓
2022年11月12日から16日までの5日間の間、米国San DiegoでSociety for Neuroscienceによる年次大会であるNeuroscience2022(以下、SfN)に参加して来ましたのでその報告をいたします。実はコロナに感染するリスクも配慮して、現地で参加をしようか当初は悩んでいましたが、本大会において光栄なことにJNS-SfN Exchange Travel Awardを受賞させて頂いたので、そのあと押しもあって国際学会としては初の現地参加をすることに決めました。海外に一人で行くのが初めてで、最初は不安ばかりでした。しかし実際に参加してみると、周りは本当に素晴らしい人ばかりで、そのような不安が一気になくなるぐらい充実した楽しい学会でした。
まずSfNの開催前に受賞者向けにPoster Presenter Overview SessionがZoomで開催されました。ここでは、その他のTrainee Professional Development Award等の受賞者と一緒に、学会に際してのアドバイスが聞けます。その中で最も役に立ったのが、SfN用のアプリをダウンロードすることです。このアプリでは、その日にどのような発表があるかの確認や、自分の興味のあるトピックではどんな発表があるかの検索、学会のスケジュール管理ができます。Lecture、Symposium、Poster、Networking Event等たくさんある中で、自分に関係しそうなものを探すのは大変ですので、非常に役に立ちました。併せて別のポスター発表者と話しして気が付いたのですが、首から吊り下げる名札のQRコードをかざして連絡先を交換するツールとしても役立ちます。しかし、その機能に気づいてなかった私も含め、メールアドレス等を登録していない方も多いので、結局は名刺等もきちんと用意しておいた方が良さそうです。さらに「他の研究者と仲良くなるためには、列で並んでいる時に声をかけると良い」というアドバイスを頂きました。また後半ではZoomのブレイクルームで、少人数で話し合う機会が設けられ、これまでに参加したことがある人からSfNの雰囲気をつかむことができました。
受賞者向けのイベントとして、1日目にInternational Fellows Orientation SessionとInternational Fellows Poster Sessionという2つのイベントが用意されていました。1日目の朝にあったOrientation Sessionでは、参加されている全員の簡単な自己紹介の後に、司会の先生方からSfNに際しての助言を頂きました。「このSfNはマラソンのようなもので、終日いる必要はなく、適宜水分補給もして休みも取りながら、参加してください」

サンディエゴコンベンションセンターの外観。左端から右端までが会場です。
「キャリアを重ねるごとに、実際の学会で過ごすより学会外で交流を深める時間に割くよ うになる。オフィシャルなものも、オフィシャルでないものも交流を深めに行ってみてください」「アメリカではポスドクを探しているPIもいるので、あなたの将来の上司になるかもしれない先生が見つかるかもしれないから、積極的に話かけに行きなさい」「このSfNは楽しいものですが、中にはむちゃくちゃなことをして将来のキャリアを台無しにする人もいるから、はしゃぎすぎないようにね」というのが、上記のZoomのセッションではなく、かつ印象に残ったアドバイスです。また同日の18時から受賞者向けにPoster Sessionがありました。こちらはその他の受賞者とともに、ポスター発表をします。こちらはトピックごとに固まっている実際のポスター発表とは違い、別分野がまざるセッションです。少し分野が離れているけれども興味がある分野の研究者と交流するのにいい機会となりました。
実際の私のポスター発表は2日目の朝8時から12時までで、コアタイムは8時から9時まででした。今回発表する内容はパーキンソン病患者の非運動症状の1つである、衝動的行動におけるMRIの画像研究です。本当にそんな朝早くから人が来るのかと思っていましたが、脳神経内科医から分野外の先生、大学院生・学部生と多くの方が聞きに来てくださり嬉しかったです。コアタイム以外は、周りにあるポスターをうろうろしながら、興味がありそうな人がじっくりと私のポスターを見ていたら説明するというのを繰り返して、結局11時半ぐらいまで発表していました。一応、名刺とポスターをA4に印刷したもの(Handout)も併せて用意しており、写真を撮りたいと言われた方にはHandoutを渡すとかなり好評でしたので、もし問題がなければおすすめいたします(3日目以降にポスター発表を聞きに行って、あなたの研究は面白そうだが、見逃してしまったという方にお渡しする意味でも役立ちました)。先述の「将来の上司になるかもしれない先生」という意味では、本当に「研究員が現在少なくて、研究員を探していてて、興味はないですか?」というありがたいお声がけも頂いたので、将来アメリカでのポジションを考えてはいるが、特に行きたいラボが決まっていないという方にも現地でポスター発表をされることをおすすめします。
聴衆としては、ポスター発表では、主にMRI/脳神経内科学/Neuromodulationに関連するものを聞いてきました。この中でも特にマニトバ大学の大学院生であるKaihim (Sean) Wong氏と1日目の同氏のポスター発表で仲良くなり、その後も昼食や夕食を一緒に食べたり、ポスターセッションを一緒に聞きに行ったりと楽しみました。こうやって初対面同士の研究者がSfNでは仲良くなるのかと、同氏から多くのことを学びました。また、上記の「休みもとりながら」につながることですが、科学的な議論に疲れた時には、近くの展示会場にも行ってみて、TMSの機器の開発者と楽しく会話をしたり、SfNのグッズを売っているところで世間話をしたりと適宜休憩をとっていました。後は、会場内にスタバがあったので、ポスター発表やその他の発表で取ったメモの整理をしながら休憩するのも良かったです。
1/2日目で声を出しすぎて声をからしてしまったため、のどを休めるためにも、3/4日目はMini-symposiumやNano-symposiumにメインを置きました。ここでは分野内の研究や分野外の動物実験を対象とした神経生理における最新の計測機器紹介に参加しました。時間がかなりタイトで質問する時間が少ないのがポスター発表との大きな違いで、こちらはその分野の概要と最近の動向を広く知るという意味で有意義です。またこのシンポジウムで、ポスター発表の簡単な紹介もあるので、そこで興味を持ったポスター発表を聞きに行くという意味でも有用でした。
もちろん観光としてのサンディエゴも楽しみました。日本人の受賞者とともに、会場の真向いのGaslamp Quarterでタコスなどのメキシコ料理を食べたり、ポスター発表で仲良くなったSean氏とアメリカに留学された大阪大学の先輩である大石浩輝博士らとLittle Italyの店で夕食を楽しんだり、アメリカらしいハンバーガーを食べたりしました。また、近くにあった映画トップガンの舞台にもなったレストランでも食事しました。店員さんも皆さん明るく声をかけてくださいますし、学会以外の人々も非常にフレンドリーです。
まとめると、科学的議論という意味でも、ネットワークを広げるという意味でも、とても充実した学会でした。来年度のワシントンでのSfNが今からすでに待ち遠しいです。最後になりますが、本JNS-SfN Exchange Travel Awardの運営に際しご尽力下さったJNSおよびSfNの関係者の皆さま、そして日頃よりご指導頂いている望月秀樹教授、天野薫教授、梶山裕太先生をはじめとする、各所でお世話になって諸先生方へ、この場をお借りして心より御礼申し上げます。
上段:
(左)受賞者とともに夕食をとったガスランプクオーターのメキシコ料理屋。
(中)アメリカのカリフォルニア大学に留学された大阪大学の先輩の大石浩輝博士との写真。
(右)ポスター発表で仲良くなったマニトバ大学のKaihim (Sean) Wong氏との写真。
下の名札の緑色のものがJNS-SfN Exchange Travel Awardの受賞者に貼付されるもので、
「SfN INTERNATIONAL TRAVEL AWARD FELLOW」と書かれています。
下段:
(左)学会の会場をでたところから見える、夕暮れの景色。
(中)映画トップガンの舞台となったカンザスシティバーベキュー。
(右)大石博士、Sean氏らとともにいったLittle Italyでのレストラン。
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