[会員へのお知らせ] 学会からのお知らせ

霊長類研究所の改編の方向性について

 霊長類研究所における競争的資金の不正経理事案を受けて、同研究所が改編されることとなりました。本年1月に本学会会員を対象として実施したアンケートでも、霊長類研究所の共同利用・共同研究拠点としての継続について賛同する意見が多数を占めており、その結果を踏まえて、霊長類研究所の共同利用・共同研究拠点としての継続申請に賛同する書面を提出していたのですが、残念な結果です。
 この問題について、日本神経科学学会の執行部および理事会において慎重に討議し、今回の京大の決定を尊重しつつも、霊長類研究所が積み上げてきた研究成果や、全国的な研究拠点・ナショナルバイオリソースプロジェクトニホンザルの中核拠点としての機能を守り、また若手研究者の研究環境が維持されるように、以下のようにコミュニティの意見を表出することを決定しました。

京都大学総長殿
  貴学が霊長類研究所の将来構想について発表されましたこの機会に、日本神経科学学会を代表して、これまで霊長類研究所が果たされてきた科学と社会への貢献に、深い敬意と謝意を表明させていただきます。
 日本神経科学学会は、脳・神経系に関する基礎、臨床及び応用研究を推進し、その成果を社会に還元、ひいては人類の福祉や文化の向上に貢献すべく、幅広い神経科学関連研究者が結集した学術団体です。霊長類を直接扱う研究者はその一部ですが、重要な研究であることは広く認識されており、本年1月に本学会会員(約5500名)を対象として実施したアンケートでも、霊長類研究所の共同利用・共同研究拠点としての継続について賛同する意見が多数を占めました。この結果を踏まえて、霊長類研究所の共同利用・共同研究拠点としての継続申請に賛同する書面を提出させていただいたところでした。「ヒトはどこから来て、どこに向かうのか」という、わたしたち人類にとって不滅の課題を、これまで霊長類研究所が様々な観点から総合的に追求し、世界に冠たる研究成果を挙げて来られたことを本学会会員は高く評価しています。とりわけ高次脳機能研究において、国内外の神経科学発展の重要な基盤となってきたと認識しています。
 一部では、今回の組織再編が「事実上の解体」につながるとも伝えられています。私どもはこの考えに与するものではございません。貴学のご発表の通り、これまでの霊長類研究所が積み上げてきた大きな研究成果、学内の教育活動並びに全国的な研究拠点やナショナルバイオリソースプロジェクトニホンザルの中核拠点としての機能、これらを十分に維持しつつ霊長類学及び関連分野がさらに大きく発展することを心から願っております。特に、霊長類学の将来を支える若手研究者の研究環境が維持されますことを願うものです。同時に学術団体として、研究費の適正使用と研究倫理の理解・遵守を会員に徹底していく所存です。
 組織再編には様々な困難が伴うものと拝察いたします。本学会に協力させていただけることがあれば、是非お知らせください。引き続き、本学会会員との共同研究や人材交流を進めさせていただければ幸甚です。今後のさらなる霊長類学の発展を祈念しています。
以上
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